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「メタ認知」 〜基本概念〜

最近、よく耳にするようになった『メタ認知』。ネットで調べてみると「自分が認知していることを客観的に把握し、制御すること」だという。もっぱら「仕事や勉強に役立つ能力」といった内容の記事が目立つが、たとえば、対人関係での行き詰まりや、「老い」の問題には応用できないものなのか? まずは、基本概念を押さえることで、その可能性に迫りたい。

「メタ認知」とは?

「メタ認知」は、アメリカの心理学者ジョン・H・フラベルというが1970年代に定義した概念で、もとは認知心理学で使われていた用語。「メタ認知」は、自分が認知(知覚、記憶、学習、言語、思考など)していることを客観的に受けとめ、制御すること、言うなれば、「認知していることを認知する」こと。
また、メタ認知は、何かを実行している自分の頭の中で働く「もう一人の自分」と言われたり、「認知についての認知」といわれることもある。

メタ認知の種類

■メタ認知的知識

フラベルは次のように分類している。
・人間(自分や他者、人間一般)の認知特性についての知識
・課題についての知識
・方略についての知識

1.人間の認知特性についての知識
・自分自身の認知特性についての知識
→たとえば、「私は英文読解は得意だが英作文は苦手だ」など。

・個人間の認知特性の比較に基づく知識:個人間の比較にもとづく認知的な傾向・特性についての知識。
→たとえば「AさんはBさんより理解が早い」など。

・一般的な認知特性についての知識:人間の認知についての一般的な知識。
→たとえば、「計算課題では「目標をもって学習したことは身につきやすい」など。

2.課題についての知識
課題の性質が、私たちの認知活動に及ぼす影響についての知識。
→たとえば、「計算課題では数字の桁数が増えるほど計算のミスが増える」など

3.方略についての知識
目的に応じた効果的な方略についての知識。
→たとえば「相手がよくしっている内容にたとえることで難しい話を理解しやすくすることができる」など。

■メタ認知的活動

「メタ認知的技能」とは、メタ認知的知識を把握した上で、現在の自分自身の状態を確認したり、対策を打てたりする能力。
また、メタ認知的技能は「メタ認知的モニタリング」と「メタ認知的コントロール」の2つに分かれる。

<メタ認知的モニタリング>
メタ認知的知識を現在の自分に照らし合わせ、悪い傾向になっていないか、知識が足りているかなどを確認していくこと

<メタ認知的コントロール>
モニタリングで確認できたことを踏まえて感情をコントロールする、改善に向けて行動を変え工夫することなど

具体的には

こういったことはメタ認知的行為と言える。
・その言動や行動に至った経緯を後から振り返る
・テストで上手くいかなかった原因を考える
・日記や備忘録をつけ振り返る
・抱えた悩みを図で表してみる
・他者からアドバイスをもらう
・他人の立場や気持ちになって考える

 

<参考>
北大路書房 (2008/10/1)
『メタ認知: 学習力を支える高次認知機能』
三宮 真智子 著