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成人発達理論について

成人発達理論について

「あの人、仕事はできるんだけど、なにせ人望がないんだよなぁ。だから部下がついていかない。そもそも、部下に何かを教えることができないんだよ…」
こんな状況に直面したことはないだろうか?現実の職場では、往々にして仕事の処理能力と指導力などの人望(人としての器)は比例しないもの。実体験してはいるものの上手く言葉にできないもどかしさが、『成人発達理論』というものを知ることによって明瞭になる気がした。結局のところ、「仕事の能力」と人間としての「器」はまったくの別物である。

成人発達理論について

ハーバード大学教育大学院教授のロバート・キーガン博士による発達心理学の1つ。人間を発達段階で大きく5つに分類し、それに基づいた組織開発や人材育成を行う。現在、様々な欧米企業で育成や評価に採用され、組織の成長に効果的に機能している。成人発達理論は、知識やスキルを獲得することだけではなく、「器」や「人間力」など質的な成長を継続的に実現しうるという観点に基づいている。

5つの発達段階

発達段階1は「具体的思考段階」と呼ばれ、言語を獲得したばかりの子供の段階。よって、成人は2以上ということになる。

発達段階2は、「道具主義的段階」もしくは「利己的段階」と呼ばれ、自分の関心事項や欲求を満たすことに焦点が当てられている。他人の感情や思考を理解することが難しく、他者を道具のようにみなすということから、「道具主義的」と呼ばれる。この段階は成人人口の約10%に見られるという。

発達段階3は成人人口の約70%を占め、「他者依存段階」と呼ばれる。自らの意思決定基準を持たず、組織や社会などの他者の基準によって自分の行動を決定します。組織や社会の決まり事を従順に守るという意味から「慣習的段階」とも呼ばれる。

発達段階4は「自己主導段階」と呼ばれ、成人人口の約20%にみられます。ここまでくると、自分なりの価値観や意思決定基準があり、自律的に行動することが可能となる。自分の成長に強い関心があり、自分の意思を明確に主張するという特徴が見られる。

発達段階5は「自己変容・相互発達段階」と呼ばれ、成人人口の1%にも満たない。自分の価値観や意見にとらわれず、多様な価値観を汲み取りながら的確に意思決定をすることが可能。自分の成長のみならず、他者の成長にも関心があるので、部下を育てることに適した段階と言われる。

注意すべき点

上記5つの意識段階は高いほうが良いというわけではない。それぞれが固有の価値を持っており、異なる質を有している。しかしながら、発達理論の世界では「自分より上の段階を理解することはできない」と言われている。意識段階が成熟していくと、他者のみならず、置かれている環境も含めて、曖昧な状況を許容できるようになる。ある意識段階から次の意識段階へ移行すればするほど、客体化できる範囲が広がり、世界の捉え方が変化していく。